日本遺伝看護学会は遺伝看護サービスのありかたとその質的向上について考えています

ニュースレター No.5 2002年2月

21世紀、2回目の新年を迎え新たな気持ちでニュースレターをお届けしたいと思います。

昨年の秋は、様々な場所で様々な機会に遺伝看護研究会のメンバーが、看護における「遺伝」との関わりを伝え、「遺伝看護学」の必要性を看護職のみな らず他の医療関係者にもアピールすることができました。また、遺伝看護のテキストを翻訳し日本看護協会出版会より「遺伝看護の実践」として出版することが できました。このニュースレターを通じてそれぞれの活動および概要と参加・出席された方々からのメッセージをお伝えします。

第21回日本看護科学学会で「遺伝看護」をアピール

 


昨年末の12月1日・2日、神戸で開催された第21回日本看護科学学会学術集会において、当研究会のメンバーにより「遺伝看護」の必要性が、多くの看護職にアピールされた。

まず、第1日目には「看護実践における倫理性―遺伝子診断・治療における看護の役割」と題したシンポジウムが催された。シンポジス トには、当研究会メンバーの武田祐子氏と安藤広子氏、さらにアイオワ大学のJ.Williams氏が招かれた。武田氏は「がん遺伝子診断における倫理と遺 伝カウンセリング」のテーマで、家族性腫瘍の患者および家族の実践をもとに、がんの遺伝子診断が進むにあたって、遺伝カウンセリングが必要となることを訴 えるとともに、遺伝カウンセリングに携わることが看護職にも期待されるのではないかと話された。また、安藤氏は「出生前診断のケアと看護倫理」のテーマ で、出生前診断より染色体異常がみつかったケースの自己決定をどのように支えてゆくのか、看護実践と倫理を中心に話された。最後に、Williams氏 は、遺伝看護の実践における倫理的問題のガイドラインについて解りやすく話された。フロアーとのディスカッションでは、様々な看護領域の方々からの意見が 出された。その中に、「遺伝子診断などのハイテク医療の進歩が見られているが、患者は防寒具もないまま吹きっさらしの中にほうり出されているのが現状であ る。看護職はこうした状況の中で患者側に立ち、いったい何ができるのか、集団として組織として何をすることが患者にとって必要なのか、戦略を考えていくこ とが大切である。」と話された。これは遺伝医療の進歩する中で看護職もそれらに目を向けるとともに、「遺伝」そのものに振り回されるのではなく、医療チー ムメンバーの一員として、遺伝について今一度問いかけるとともに、どんな対応をしていく必要があるのかを看護職の集団として考えていくことの大切さにエー ルを送って頂いたように思われた。遺伝看護研究会が目的とすることを、もっともっと多くの看護職の方々に理解していただくことの必要性を再認識するととも に、今回のシンポジウムは、多くの看護職へ「遺伝看護」をアピールすることができたのではないだろうか。安藤・武田両氏には大変ご苦労様でした。

さらに、第2日目には昨年に引き続き、遺伝看護研究会主催で「遺伝看護教育に向けての課題」と題し、看護教育に遺伝に関する内容をどのように取り入れるかについての交流集会が開催された。

 本研究会にとっては2回目となる交流集会であり、「看護」が遺伝医療に対応するために、遺伝医療の中で看護に期待される責任範囲と実践能力を踏ま えながら、看護基礎教育、現任教育、大学院教育の中で、どのように人類遺伝学を取り入れ、遺伝に関連した看護教育を展開してゆくかのかを、3つの教育課程 で実践されている方にその状況と課題を話していただいた。

  1. 看護基礎教育課程における取り組み
    竹内 千恵子(杏林大学保健学部看護学科)
  2. 現任教育における教育の実際から
    有森 直子(聖路加看護大学)

  3. 大学院教育における実践と課題
    数間 恵子(東京大学医学部健康科学看護学科)

その後、交流集会に参加してくださった方々と「遺伝」に関する教育について共に考えた。

以下、その内容および出席された方々のご感想をお伝えします。(文責 横山)

交流集会に参加して


丸山 紳子(横浜市済生会南部病院)

 医療のあらゆる領域で遺伝に関連した研究が行われ,人々にとっての出生,障害,病,死などの意味が変化しつつあり,疾病や健康問題の特性に「遺伝 性」という課題が結びつくことにより,個人の存在や,家族,地域社会の人間関係の有様も変化する可能性を持っている.このためにすべての看護職が各々の実 践領域に関連した遺伝学の知識を持ち,看護学と遺伝医療の統合を目指す努力が必要であり,「看護」が遺伝医療に対応するために遺伝医療の中で看護に期待さ れる責任範囲と実践能力を踏まえながら看護基礎教育・現任教育・大学院教育の中で,どのように看護教育を展開していくか考えることを目標として今回の交流 集会が行われた.

 交流集会のプレゼンテーションではそれぞれの立場での貴重な研究を聞くことができたが臨床で働く立場である私にとっては現任教育の重要性と難しさ について特に関心を持った.私には,遺伝医療に「看護」は追いつこうとしているのだろうか?現実的に遺伝医療の対象となる当事者たちは看護職が及びもしな いほどの知識を持っているのではないだろうか.看護職はその人たちが持っている不安に応えることが出来るであろうか.いや,基礎的な知識ですら持ち合わせ ていないかもしれない.しかも急速な遺伝医療に追いついていけない危機感を持っている看護職はどのくらいいるだろうか?という疑問があった.

身近な看護職に「遺伝看護」について聞いてみると「ピント来ない」「具体的に何をするのか」,また,「遺伝医療」については「勉強不足で質問された らどうしようかと不安」という答えがかえってきた.臨床にいる看護職は「遺伝医療」について勉強不足を認めながらも具体的にどういう勉強をすればいいのか わからない,目の前に対象者が現れた時,どうすればいいのか,どういう援助ができるのかという漠然とした不安を持っているのではないだろうか.

言葉の意味を知るということは援助の第一歩である.まずは「遺伝看護」という言葉を知ってもらうこと,それが「遺伝看護研究会」の重要な「仕事」の一つではないだろうかということが今回の交流集会に参加しながら感じた事である.

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法水 愛子(助産婦)

日本遺伝看護研究会にとって、2回目となる今回の交流集会では、「看護」が遺伝医療に対応していくために、看護教育に遺伝に関する内容をどのように取り入れるかということをテーマに、意見交換がなされました。

看護教育にかかわる3名の先生方からプレゼンテーションがあり、杏林大学保健学部看護学科の竹内千恵子先生から、看護学部の学生を対象にアンケート を取ったところ、基礎科目の中で遺伝に関する講義があったにもかかわらず、その後に、「遺伝についてこれまで講義を受けたことがありますか」の問いに、多 くの者が「ない」と答えており、学生の認識につながっていないというコメントがありました。これは、私たち臨床スタッフにおいても同じことではないかと思 います。

私は、助産婦として病院勤務をしていた時に、羊水検査の介助に携わる機会が多くありました。そこでは、妊婦が羊水検査を受けることを決定するまでは 医師が遺伝外来で関わり、後日あらためて検査を受けるために妊婦は来院していました。この間、私たち看護職が妊婦に関わるのは、検査の介助を行うときのみ でした。検査後も継続して私たちが関わることは殆どありませんでした。こうなると看護の実践は、ルチーン化された検査介助が主となりがちになってしまいま す。しかしこういった場面において看護の役割はとても大きいと思います。限られた関わりではあるものの、妊婦が何のために検査を希望してきたのだろう、検 査を受けに来るまでの背景はどのようものなのだろう、心の状況はどうなのだろう、これからも抱える問題は何なのだろう、などといった妊婦の複雑な状況を念 頭におきながら関わることで、私たち看護職の妊婦の受け止め方が変わってきます。そして妊婦への接し方や言葉のかけ方が変わってきます。さらに遺伝外来も 含め、検査前後の継続した関わりの必要性を実感します。

「遺伝看護」といっても、ピンとこないこともあるかも知れません。羊水検査を受ける妊婦と関わっていた私もそうでした。そこでの遺伝看護に対する認 識はとても乏しかったと思います。私たち看護職が関わる対象や、そこでの看護実践に結びつけて考える機会を持つことが、とても大切だと実感しています。

今後、看護教育に「遺伝看護」が取り入れられていくにあたり、看護の対象者や、看護の実践の現状が明らかにされつつ、看護の役割が具体化され、それらを踏まえた看護教育の発展に注目し、期待したいと思います。

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日本の遺伝看護の現状を国内外の遺伝医療関係者に


2001 International society of nurses in genetics (10/10-12.サンディエゴ)
2001 International Symposium on Genetic Nursing(11/14-15.山口)

ISONG 14 Annual Educational Conference 2001 に出席して


有森 直子(聖路加看護大学)

 同時多発テロの悲しい出来事の余韻が残る中、まさに米国の空爆がその朝に始まった日、私たちは成田を飛び立ちました。空港では、出発するか否かで 3時間近くメンバーで話し合い、覚悟を決めての出国でした。通常の海外出張は、いつ離陸したのかもわからないほど搭乗とともに熟睡する私ですが、今回ばか りは覚醒した状態でのフライトでした。

学会では、科研で行っている研究“The Core Competencies for Basic Genetic Nursing Practice in Japan”を口演で行うという私にとっては、初めてのチャレンジでした。日本にこられた先生方(モンセン先生、アンダーソン先生、キャサリン先生)の暖 かいサポートの中でなんとか終える事ができました。今回のISONGの大きなトピックは、これまでずっと懸案になっていたISONGとしての遺伝看護の認 定者が選ばれたことだと思います。その中のお一人のマクドナルドさんが、認定のために必要であった書類をみせてくださいましたが、20センチ近いファイル でした。また、最終日には本研究会会長安藤さんが、”Genetic” Nursing in Different Cultures: Common Aims and Competencies”の発表をされて参加者の高い関心を得ました。次回は、Baltimore 2002年10月13-15日です。

「国際看護シンポジウム」で日本における遺伝看護の現状を


溝口 満子(東海大学健康科学部)

昨年11月14-15日に山口大学霜仁会館において「第24回日本小児遺伝学会学術集会」(会長:山口大学医学部保健学科塚原正人教授)が行われま した。その際に、塚原先生と山口大学のご厚意によって、翌16日に、’2001 International Symposium on Genetic Nursing’ が開催されました。参加者は、同学会に参加した遺伝看護にご理解と関心のある医師や、遺伝看護研究会のメンバー、山口大学の教職員、近隣の医療関係者など 40数名でした。皆様ご存知のあのノーベル賞受賞数学者の広中平祐学長が、開会の挨拶をされました。英語でユーモアあふれるスピーチに会場はホットな雰囲 気になり、英語での発表に緊張していた私たちも少し気持ちが和らぎました。内容は、米国より招聘された3人の先生方による1時間ずつの講演と、遺伝看護研 究会のメンバー4人による30分ずつのプレゼンテーションで、座長もそれぞれに担当が決められており、原則として質疑もすべて英語で行われました。

午前中は、まず「プラダー・ウィリー症候群(PWS)をもつ人のケアにおける看護の役割」について Suzanne B. Cassidy, MD (Professor of Pediatrics, Univ. California, Irvine) による講演でした。PWSでは世界的に高名な先生で、肥満防止における患者理解と関わりについて具体的にお話くださいました。次いで「18と13トリソ ミー児のケアをめぐる医療的、倫理的問題」について John C. Carey, MD (Dept. Pediatrics, Univ. Utah, Health Science Center) による講演でした。これらの児の1年生存はわずか5-10%で、多くの問題はあるにせよ確実に成長発達するということを家族と生活を楽しんでいる様子など 写真で示されました。ケアにおける3つの意思決定:1.出生前診断がなされている時、帝王切開をするかどうか(生児を期待しなければ母親を傷つけることはな いという考えがあるそうです)、2.出生直後、救命処置をするかどうか、3.心臓手術をするかどうかを支援する必要があると、先生の長年の臨床経験と患者や家 族を支援してこられた経験を踏まえての話には感銘深いものがありました。また先生は、遺伝関連の有名な雑誌、’Medical Genetics’ のチーフエディターでいらっしゃることを付記しておきます。

午後は、篠木絵里(北海道医療大学)「看護学生の発症前診断に対する講義前後における考え方の違いについて」、飯野英親(山口大学)「短大、大学教 育における遺伝教育の実態」、安藤広子(岩手県立大学)「地域特性に基づいた遺伝看護の実践に向けて」、溝口満子(東海大学)「遺伝看護の日本の現状と将 来」の発表が流暢な(?)英語でなされ、外国の先生がたには日本の現状が興味深かったようです。最後は、はじめての遺伝看護の教科書(Clinical Genetics in Nursing Practice, Springer)を著されたFelissa R. Lashley, RN, PhD (Rector of Sch. Nursing, Southern Illinois Univ. Edwardsville) が、「ポストヒトゲノム時代:看護や医療はどう影響されるか」と題し、今回のシンポジウムの締めくくりにふさわしい総括的な講演でした。

photo各 プレゼンテーションに対して、会場から英語、日本語での質問に対し、座長、スピーカーは知る限りの単語を駆使して応じ、大変打ち解けた雰囲気の中で行われ ました。最後は参加者全員で輪になってフリートーキングとなり、米国の先生方、日本の遺伝医療を第一線で行われている医師の方々、看護職がとても身近に出 会えた場だったと思います。今回の出会いがきっかけになり、遺伝看護が実践レベルで向上し、よりよい遺伝医療サービスに貢献できるよう医師の方々とも協働 できる下地が出来たのではないかと思います。このような機会を企画してくださった塚原正人先生、そして山口大学保健学部の先生方に心より感謝申し上げま す。

 

 



日本私立看護系大学協会セミナーのシンポジウムで遺伝看護教育を「21世紀の看護教育への提言」として


日本私立看護系大学協会セミナーで「21世紀の看護教育への提言」と題したシンポジウムが開催された。ここでも、「遺伝学の看護教育カリキュラムへの導入の必要性」と いったテーマで、溝口満子氏が遺伝性疾患を有する患者の家系図を用いながら、遺伝問題をもつクライエントへの看護援助の必要性について解説すると共に、大 学教育カリキュラムにおける遺伝関連教育の実態、臨床看護職の遺伝問題への対処経験や教育ニーズ、臨床における看護職の実践能力に関する調査結果を紹介し た。さらに、今後の大学看護教育における遺伝看護教育プログラム導入に向けての課題についても話された。他のシンポジストの方々も21世紀の看護教育は、 「社会が求める看護専門職」をめざすことが課題であるとしながら、社会や医学の急速な変化を的確にキャッチできるよう、看護情報の入手のありかたを看護教 育の中でシステマティックに展開できるような教育を検討すべきではないかと提言された。これらは、まさに日本遺伝看護研究会の考える今後の看護教育のあり 方と合致する部分であり、科学の進歩に伴い保健医療のあり方が大きく変化していく中、我々看護職がどうクライエントに支援できるのか、従来の看護教育だけ では不十分な部分を明らかにし、今後あるいは将来を見据えた看護教育のありかたを検討してゆくことの必要性を考えさせられた。(文責 横山)

 

遺伝医療の構築に向けての社会的動向


厚生科学研究会議の概要報告「遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究」


安藤 広子 (岩手県立大学看護学部)

 平成13年度「遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究」の全体会議が、12月2日(日)に神戸ポートピアホテルで開催された。主任研究者は古 山順一先生で、6つの研究班に分担されていて、総勢50名余のメンバーから成っている。看護職は本研究会員の有森直子さん、武田祐子さん、溝口満子さん、 安藤広子の4名が、千代豪昭グループ:「遺伝カウンセラー(非医師)制度に関する研究」のメンバーとして、昨年度より参加している。このプロジェクトは、 遺伝医療に関連のある学会や研究会からのメンバーが参加して検討していることから、ここで決定されたことがわが国の遺伝医療体制の基本となっていくであろ う。

 会議が開催された日は、隣接する会場で日本看護科学学会の学術集会が行われていたこともあり、その招聘者であるJanet Williams 博士(アイオワ大学看護学部)に全体会議の初めに「遺伝医療における看護の役割と教育」について講演をしていただいた。ここでは、全体会議の概要について 述べることにする。

1.Janet Williams 博士の講演

遺伝看護の役割について、“SCOPE and STANDARDS of Genetics Clinical Nursing Practice”の内容について実践事例を提示しながら、15分という限られた時間の中で簡潔・明瞭にお話をされた。

配布資料:

  1. ANA & ISONG : STATEMENT on the SCOPE and STANDARDS of Genetics Clinical Nursing Practice, 1998.   
  2. Janet Williams :Genetic Nursing ; 21st century Message from World to World, 看護研究, Vol.34, No.5, 67- 74, 2001.
  3. INTER NATINAL SOCIETY OF NURSING IN GENETICS(ISONG)NEWSLETTER,CREDENTIALING COMMITTEE CALL FOR PORTFOLIOS (March - 2001).

2.分担グループの報告

  1. 古山グループ:臨床遺伝専門医制度に関する研究

    2002年4月1日より「臨床遺伝専門医制度」が開始される。これは、日本人類遺伝学会『臨床遺伝学認定医制度』と日本遺伝カウンセリング学会 『遺伝相談認定医師カウンセラー制度』を一本化させる。臨床遺伝専門医制度は基本診療科のsubspeciality の専門医制度として位置づけられる。

  2. 黒木グループ:地域遺伝カウンセリングシステムの構築に関する研究

    遺伝カウンセリングシステムは地域遺伝センター(100万人、各県最低1カ所)を中心とし、複数のサテライトが住民に近い遺伝相談機関(人口 10-20 万人に1カ所)となる。全国で展開される地域遺伝センターの統括・支援機能をもつ中央遺伝センターの設置案が提示された。

  3. 藤田グループ:遺伝カウンセリングに必要な情報システムに関する研究

    京都大学と信州大学からの情報を同時にアクセスできるようにした。

  4. 福嶋グループ:遺伝カウンセリングのガイドラインに関する研究

    臨床遺伝認定医および遺伝相談認定医の465名を対象に、遺伝カウンセリングのガイドラインに関するアンケート調査結果(回収率52.8%)に ついての報告があった。遺伝相談を「一人で行なっている」は48.7%で、「一人でない場合の職種」は医師が66名、看護婦15名、保健婦3名、心理4 名、MSW 2名、その他 4名であった。また、「一般社会から遺伝カウンセリングの概念が正確に理解されているか」は、72.5%が「ほとんど理解されていない」と答えていた。

  5. 千代グループ:遺伝カウンセラー(非医師)制度に関する研究

      遺伝カウンセラー(非医師)資格認定と養成に関する基本方針としては、「大学院修士レベルの資格を目標にした。わが国でも近い将来には医学部、保健系・看 護系大学院に専門コースが設置される可能性があるが、医療現場での火急のニーズに応えるためには当分の間、遺伝関連学会が中心となって養成・資格認定を行 なう必要がある。将来、大学における養成が始まり、資格が学会認定から国家資格に移行する可能性も考慮しておかねばならず、そのためには資格の認定方針を 厳密に合意しておかねばならない」。当面の対応として、2つのコース:1.関連学会による養成研修の修了者,2.大学院修士課程遺伝カウンセラー養成専門コー ス修了者への資格認定について検討を行なっている。そして、平成14年3月までに、研修カリキュラム(カリキュラムモデル)についても検討結果を提示する 予定である。

  6. 左合グループ:周産期遺伝カウンセリングシステム構築に関する研究

    周産期遺伝カウンセリングの需要予測ならびに実態調査の一環として、母体血清マーカー検査、羊水検査の実施件数等についての調査を行う。

    *皆様のお考えをこのプロジェクトの検討に反映さたいと思いますので、ご意見やアドバイスをよろしくお願いいたします。

 

第11回公開学習会


2001年9月22日(土)第11回公開学習会が「羊水検査を受けた女性の価値判断―夫との意見の相違に焦点をあてて」と題して開催されました。以下学習会に参加された様子を会員の方からレポートしていただきました。

遺伝看護に取り組む仲間づくりができる


二村 良子(三重県立看護大学)

今回の公開学習会は、いつもの聖路加看護大学が公開講座開催中ということで場所を日赤看護大学に移しての開催でした。研究会メンバーで ある小笹由香さんが、大学院で今取り組んでいらっしゃる「羊水検査を受けた女性の価値判断―夫との意見の相違に焦点をあててー」がテーマでした。羊水検査 を受けて、結果報告された後の妊婦を対象に一人40分ずつの面接を実施したもので、たいへん貴重な内容でした。面接の内容より、この検査を受けるかどうか ということについて妊婦本人と夫で決めて、「誰にも知られたくない」ということがあるのか他の人に相談していないという現状があるようです。出生前診断を 受けるかどうか、また検査を受けた後どうするかという意思決定の段階、過程に継続的支援が必要であると言われています。しかし、この学習会で意見交換をし ていく中で、決めていく過程にかかわることも大切であるが、決めたことを振り返ることも大切なのではないかということも出てきました。ここに看護の果たす 役割の一つが見えてきました。

この研究会は、毎回全国各地からの参加者があり、事例に基づいて、参加者それぞれの立場や経験を通しての意見を出し合い、いろいろな視 点から遺伝看護について考えられるので、私は毎回この研究会に参加するのを楽しみにしています。日本における遺伝看護は、これから人々に認知されるように 形づくっていく段階であり、事例検討を積み重ねていくことで、少しずつそれも可能なのではないかと思います。また、昨年に引き続き、看護科学学会におい て、この研究会が交流集会を実施したりと、活発に多くの方々に対しても遺伝看護のアピールを行っています。このような活動が遺伝看護の市民権獲得のために 大切なのだと思いますし、また、個人において今行っていることを振り返ることで新しい何かが見つかることもあると考えます。

私は、この公開学習会にできるだけ参加し、皆様の実際の活動に刺激されながら、遺伝看護に取り組む仲間作りを身近でしていきたいと考えています。

実践に向けての課題づくりに役立つ事例検討


和田 恵子(東海大学健康科学部)

9月22日、日本赤十字看護大学で小笹由香さんの事例提示による上記の学習会が行われた。当日は秋晴れのすがすがしい日であった。

小笹さんの報告は、羊水検査を受けた女性の検査への振り返りを行い、その検査の経緯やそのときの気持ち、さらに現在の気持ちや周囲の状 況などをインタビューして分析したものであった。その事例は、妊婦やその実母はあまり羊水検査を必要と感じていなかったが、夫やその家族が検査を望み羊水 検査を受けた方であった。このように、羊水検査を受けるにあたっては様々な背景と様々な葛藤があることがわかった。われわれ看護者は、妊娠が確定し、外来 に受診するようになってからのかかわりが殆どであり、妊婦が検査を受ける前後で医療者やカウンセラーと関わることが少ないのが現状であるが、今後はこうし た検査への支援が必要であることが出席者の中で確認された。

検査を受けるか否か、妊娠を継続するにせよ中断するにせよこの時期の関わりがいかに大切であるかを痛感させられた報告であった。こうし た支援には、その人の価値体系を知り、医療者がどう関われるのかが問われてくると考えられるので、きめ細かい支援が必要であろう。したがって、今回のよう な事例学習を積み重ねてゆくことこそ大切なことであると思われた。今回は、聖路加看護大学が公開講座で使用できないため学習会開催会場が変更となり出席者 がやや少なかったが、和気あいあいとした中で多くの質問がだされた。そして、母性看護が専門でない方からも多くの質問が出され、ディスカッションもしやす く、また各施設での現状の情報も知ることもできた。この学習会を重ねながら、カウンセリングをいかに展開してゆくのか、実践に向けての課題を様々な角度か ら見つめなおすことが大きな学びとなると思った。そして、15人のインタビューを行った小笹さんの今後の研究の成果もさらに楽しみにしたいと思う。

 

学会・セミナー情報


今後開催される遺伝に関連した学会・研究会・セミナー等についての情報を下記に掲載しますので、ご参加下さい。また、ご参加された方は、その様子・ご感想を事務教までお寄せ下さい。

第3回周産期遺伝医療懇話会


日時:
2月15日(金)19:00―20:45
会場:
東京医科大学病院 第一研究教育棟4階
第2講堂
会費:
1000円以下にて頂く予定(軽食つき)
プログラム:
  1. パネルデイスカッション:テーマ

      “妊娠20週にて心臓の形態異常が診断された症例をめぐって”

    症例提示ならびに話題提供

    青木 茂・黒澤健司先生(神奈川県立こども医療センター周産期科・遺伝科)

  2. Briefing/ 当日の参加施設から一部自施設紹介,報告など

    (担当幹事:平原史樹 横浜市立大学医学部産婦人科学教室045-787-2689)

    e-mail: hirafu@med.yokohama-cu.ac.jp

遺伝カウンセラー講演会


 アメリカで遺伝カウンセリングをされているMs. Barbara Bowles Bieseckerご夫妻による講演・レセプションが開催されます。

日時:
3月22日(金)18:00-
会場:
経団連会館 (詳細につきましては、事務局まで)

 

事務局からのお知らせ


  1. 平成14年度の遺伝看護研究会総会および夏季公開学習会開催について

    開催日:9月29日(日)
    開催地:長野県(会場は未定)
    本年度総会は、例年開催されております地方での公開学習会に合わせて開催することになりました。開催地は長野県を予定しておりますが、詳細に関しましては決定次第、事務局より後日お知らせいたします。

  2. 第13回公開学習会について
    開催日時:4月6日(土) 午後1時-3時
    場所場所:聖路加看護大学(会場は当日提示)
    テーマ :未定
    問い合わせ先:tel/fax:03-5550-2267(有森)
  3. ホームページ開設予定のご案内
    会員皆様からご要望がありました研究会のホームページがいよいよ今春オープンすることになりました。予定としましては、3月末にアクセス可能となりますので、下記のアドレスまでお試しください。
      http://idenkang.umin.ne.jp/
  4. 「遺伝看護の実際 事例からのアプローチ」の翻訳本のご案内

    先日、日本看護協会出版会より下記の本が研究会メンバーの翻訳により出版されました。ぜひご活用ください。

    書名:「遺伝看護の実際 事例からのアプローチ」
    著者:デリー・H・リー 他   監修:清水淑子 
    監訳:溝口満子 安藤広子
    翻訳:遺伝看護研究会
    定価:3000円+税

    以上

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日本遺伝看護研究会ニュースレター No.5 2002年2月
事務局:東京都中央区明石町
聖路加看護大学内
Genetic Nursing Committee in Japan