日本遺伝看護学会は遺伝看護サービスのありかたとその質的向上について考えています

12.NIPT関連

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母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の指針改定に関して

2019年3月5日
日本遺伝看護学会
理事長 中込さと子

 日本産科婦人科学会がNIPT実施施設に関する改定について意見公募を開始したことをお知らせします。
 3月2日の会見では「認定施設の偏在があること、また、指針を守らず、血液検査だけをする無認可の施設で多くの妊婦が検査を受け、陽性が出て右往左往している最悪の状況である。少しでも妊婦が困らないようにするため」と発表されています。
 日本遺伝看護学会の皆様には、ぜひこの指針を一読いただき、ご自身でお考えいただき、よろしければ、アンケートと、コメントを投稿していただければと思います。特に産科医療、遺伝医療に携わる皆様におかれましては、1)現状の問題点、2)新案になった場合に予測される課題、3)どうあったらよいと思うか、など皆様が思う意見をお出しいただければと思います。

日本産科婦人科学会 NIPT(新型出生前診断)実施施設の改定案について意見公募 
http://www.jsog.or.jp/modules/news_m/index.php?content_id=591

新指針の大きな考慮点は以下の3点です。

1)どのように拡大されるのか
 これまでの認定施設(現在92施設)とほぼ同等の体制で行う施設を「基幹施設」とし、さらにNIPTの検査前に検査の説明と情報提供をするための研修を受けた産婦人科医が行う「連携施設」の2種類を設置する点です。
たとえば、ダイレクトに羊水検査をしていた施設が、産科医が訓練を受けることにより、NIPTという選択肢が増えるというケース、あるいは、認定施設に紹介していた開業医が、訓練を受けることで、自施設で行うことができるケース、などが想定できます。
連携施設は、分娩や人工妊娠中絶に対応する施設と規定されておりますので、一部の開業医を除けば助産師や正看護師がいるはずです。多くの地域周産期医療センターもこの中に含まれます。
地域によっては、他県の無認可施設で検査を受けざるをえない妊婦さんがいたかもしれません。もしもこの指針が運用された場合、助産師・看護師・保健師にも大いに責任が加わることでしょう。
 加えて、これまでのNIPT認定施設といわれていた施設の助産師として、日頃考えておられる課題についてもご意見を出してください。

2)拡大することの弊害が予測されます。
 安易な拡大は染色体疾患を持つ方々への社会的障壁を強化するものとならないようにすることが大切です(日本ダウン症協会もこの点を表明しています)。
 遺伝学的検査の普及(科学の進歩)に伴い、社会の人々は「検査は受けるもの(科学の進歩があるのだから)」と単純に誤解する可能性があります。看護者の倫理綱領 第1条、第2条にある通り、看護者は人間の生命、人間としての尊厳及び権利を尊重し、多様性を尊重する立場です。
 妊婦と胎内に宿ったいのちの尊厳を守るために、看護者は何をしなければならないでしょうか。安易に検査を受けて後悔する、受けなければならないプレッシャーが生じる、そんなことにならないよう、妊娠を祝福しつつ、妊娠葛藤に対する悩みに応じていくこと、妊娠初期から妊婦健診で寄り添う助産師の責務を再考いただきたいと存じます。 

 日本ダウン症協会 NIPT指針改定をめぐる動きについて
 http://www.jdss.or.jp/project/05_07.html

3)さらなる変更点として、現行の指針に記載された「遺伝看護専門職」という言葉が削除されています
 改定案には「遺伝看護専門職」に相当する文言は記載されていません。
 日本看護協会は2017年に遺伝看護専門看護師の認定を開始しています。当学会では、遺伝看護専門看護師はNIPTをめぐる医療において、役割を発揮できると考えています。
 今後、新指針がどのようになるかに関わらず、日本遺伝看護学会はNIPTをはじめとした出生前診断・検査に関わる看護職者を支援するためのプログラムを検討しています。
 さらに、この課題については、日本看護協会、日本看護系大学協議会(専門看護師教育認定機関)、日本助産師会、日本助産学会、日本新生児看護学会、日本生殖看護学会、日本母性看護学会等関連学会へも広く呼び掛けたいと存じます。

平成25年3月9日に開催された日本産科婦人科学会理事会にて「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針(PDF 197KB)」が承認され、同日、日本医師会、日本医学会、日本産婦人科医会、日本人類遺伝学会および日本産科婦人科学会から「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」について共同声明が発表されました。

これらの指針などに関連して、日本遺伝看護学会では以下の活動を行いました。


1.日本産科婦人科学会・公開シンポジウム 

「出生前診断 ―母体血を用いた出生前遺伝学的検査を考える」

2012年11月13日に開催されたシンポジウムにて、本学会理事長・有森が講演しました。

妊娠中の女性の不安‐出生前検査は「安心」だけをもたらすのか‐.pdf

2.「母体血を用いた出生前遺伝学的検査の適切な導入にあたっての意見書」

公益社団法人日本産科婦人科学会および母体血を用いた出生前遺伝学的検査に関する検討委員会に対し、本学会より意見書を提出しました(2012年12月7日)。

母体血を用いた出生前遺伝学的検査の適切な導入にあたっての意見書.pdf

3.「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針(案)」パブリックコメントについて

2012年12月15日に提示された「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針(案)」に対してパブリックコメントを募集していることを会員に案内しました。

パブリックコメント募集期間 2012年12月17日(月)から2013年1月21日(月)17:00まで